純粋少女と歪んだ魔法
第二章 ~私の手の代わり~
 私は母のことを思い出していた。

白いベッドに横たわる私に、母はいつか、こう罵った。

「ー あたしに愛されたかったら、その父親似の顔をどうにかして、アザを完全に消し去ることだ、化け物」
と。

 私はどうやら母に好かれていなかった。

でも、薄い記憶を辿って私は思い出した事がある。


 確か、私には双子の姉がいた。

 見たこともないし、声すら聞いたことがない。
私は生まれてすぐにここに幽閉されていたから。

 じゃあ何故私が姉を知っているかというと、昔一度だけ母が面会に来たことがあって、その時話していたからだ。

 母は、姉に関してはちゃんと話をしてくれた。

 話によると、姉の方がやはり顔が綺麗で、私と目の色が違っているらしい。

 母の顔は思い出せない。
きっと思い出したくないからだと思う。

 そんな事を考えながら、私はおそらく眠っていたようだ。


「起きてよ、レイラ」

 耳元で声がする。
薄く目を開けると、白い猫が私の傍らにいた。

「あぁ…おはよう、ルイズ」

ここは何処だろう。
ベッドに寝ているみたいだけど、硬いベッドではない。

昨日の事は夢ではなかったみたい。

「あんた昨日寝ちゃったでしょ。ここまで運ぶのそれなりに面倒だからちゃんとベッドに入って寝てちょうだい。」

「ルイズが運んでくれたの?」

「ま、色々やって、ね」

私の頭上に広がる天井は、クリーム色に植物の繊細な絵が描かれていた。
ここはベッドが置いてあるだけで、特に他のものは置いてない。
さっきとは違う場所なんだ。

ふわぁとルイズが欠伸をした。
私は上半身を起こしてルイズを見た。
「何?」

「私、お前の事嫌いだわ。」
「酷いわねー、突然…」

 不満そうなルイズの声を私は少し笑って、
「ね、体の色って変えれないの?」
そう尋ねた。

ルイズは少し悩むと、
「そうね、何色がお好み?」
と逆に訊いてきた。

 赤い目に合う綺麗な色。それは ー
「ー 紫」

「うん、いいセレクトじゃない」
 ルイズは尻尾をひらりと振った。
すると、体の色が、白から紫へと変わった。

「面白いね」
「そうかしら」
そう得意気にいうルイズ。

「さて、早速だけどお仕事してもらうわよ。」
「お仕事って、昨日言ってた人殺し?」
「えぇ、今日からもう宜しくね。大分長いことかかるだろうけど、ちゃんと願いは叶えてあげるから」

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