印堂 丈一郎の不可解な生活
渋々、そして恐る恐るといった感じで。

丈一郎は骨董品屋の品物の一つだった年代物のレターナイフで、自分の手首に傷を付けた。

傷自体は丈一郎の調息によってすぐに治癒する事が出来る。

だから傷が塞がらないうちに。

「んぐっ、んぐっ…」

私は彼の手首から滴り落ちる血を、下で受け止めるようにして飲む。

口に含み、真っ赤な血を嚥下する。

「た、頼むぜ…噛みついてくれるなよ…?」

おっかなびっくりで、私が血を飲む様子を見る丈一郎。

…あんまり、その…見ないでほしい。

私が丈一郎の血を飲んでいる様子を見られるのは、自身がとても浅ましい女になった気分になって居た堪れなくなる。

例えるなら、丈一郎に発情している姿を見られるのと同等といった感じか。

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