印堂 丈一郎の不可解な生活
鮮血が飛び散り、上体が切断されて宙を舞い、湿った肉の音を立てて地面に落ちた。

ベナルの足元に落ちたのは、お爺ちゃんの切断された上半身。

お爺ちゃんは、丈一郎を庇ってベナルのギロチンを受け止めていた。

その結果が、この無惨な姿だった。

「じ…」

丈一郎の顔面が蒼白となる。

「爺さぁぁあぁあぁぁぁあぁあんっっっっ!」

号泣。

号泣するしかない。

自分を調息使いとして育ててくれた師匠。

短い間だけど、丈一郎を心身ともに鍛えてくれた師匠。

そんな人が、自分の身代わりに…。

「爺さん!何で!何でそんな真似を!」

「わ…私も…」

喀血しながら、お爺ちゃんは言う。

「私も希望を見い出したのだ…丈一郎…君の勇気に…」

お爺ちゃんは上半身だけになりながらもベナルの足首を摑み、全身全霊を込めた調息を流し込む!

「私が足止めしているうちに、丈一郎は貴遊と共に逃げろ!貴遊を頼む!その子に…人間らしく生きさせてやってくれ…!」

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