立花課長は今日も不機嫌

良樹さんによると、お酒を飲んで一定時間が経過すると、突然意識を失ったように眠り込んでしまうらしかった。

つまり、キス魔というのは、立花さんが言っていた通り、“ガセ”で、私は良樹さんに担がれただけだったのだ。



「海人もきっと、同期のみんながそばについていたから安心して飲んだのよ」


良樹さんが微笑む。

私のそばでは安心して飲めないということだ。
……と、つい卑屈になってしまう。


「でも、良樹さんったらヒドイですよ。キス魔だなんて」


すっかり騙された私。
まさか嘘だとは思いもしなかった。


「ふふふ、ごめんね」


良樹さんは肩をすくめて舌を出した。


立花さんに、うっかり変なことを口走るところだった。
思い出しただけでも恥ずかしい。


「でも、二人であんな密室にいたりして、本当にキスされてたりなんかしてー」

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