立花課長は今日も不機嫌
「それなら、どうして携帯に連絡くれないのよ」
「したわよ。でも、ずっと電波が通じないって。ね、父さん?」
「ああ、そうだった」
ーーそうだ。
夕べは病院にずっといたから、電源を切ったままにしていたのだ。
タイミングの悪さを呪った。
「で、どうして私に直接じゃなく、人事部に内線したのよ」
「だって、ねぇ」
父と母が顔を見合わせる。
「杏奈の部署名を尋ねられてさ。そんなの分からないし。従業員のことなら人事部かと思って、受付のお嬢さんに電話をかけてもらったんだよ」
眩暈がしてきた。
悪いことは、どうしてこうも重なるのだろうか。
「……それで、電話に出た人に名乗った?」