立花課長は今日も不機嫌
「やった! 杏奈さんに味方してもらえれば怖い物なんてないぞ」
小さくガッツポーズする入江くん。
両手を胸の高さまで上げたまま、トイレへと向かった。
私が一人になるのを見計らっていたのか、良樹さんがおもむろに近づく。
「杏奈ちゃんが男連れなんかで来たものだから、海人が機嫌を損ねちゃってて」
「え?」
ほら、と良樹さんが立花さんをこっそり指差す。
意識的に見ないようにしていたけれど、その指先につられて立花さんを盗み見た。
……ほんとだ。
眉根を寄せているのは、横顔からでも分かるほどに。
気難しそうに真っ直ぐ前だけを凝視している。
機嫌が悪いということを隠すつもりもなさそうな様子だった。