立花課長は今日も不機嫌

「そうなんだけどね……」


私は、立花さんには人事部長が相応しいと思っていたから。

次期部長の座は確実視されていたはずなのに。
どうして業務監査部なんて……。


「本社に残るんだし、それに部長だよ? その内部観察眼を買われて、業務監査部の部長なんだよ? 落ち込むところじゃないでしょ」

「だって、業務監査部って何だか警視庁だか警察庁だかの公安みたいに、あんまりいい印象がないじゃない?」


どちらかというと、従業員みんなを疑いの眼差しで見るようなイメージだ。
そこの部長。

……はぁ。
ランチを前にして、溜息が漏れては消えていく。


「まったく、これだから杏奈は会社のことに興味がなさすぎるって私にボヤかれるのよ」


私は、ことごとく人から呆れ顔をされる性質みたいだ。
今度は、沙月が溜息を吐いた。

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