立花課長は今日も不機嫌
消毒液を付けた脱脂綿をまだ血の滲む傷口に当てると、立花さんは小さな呻き声を上げた。
「す、すみません。痛いですか?」
咄嗟に脱脂綿を遠ざける。
「いや、ちょっと染みただけだ」
それは左腕の肘から手首まで広範囲に亘る裂傷で、拭うそばから血がどんどん滲んでくる。
「病院に行った方が……」
「単なる擦り傷だ。心配はいらない」
「傷の他に痛いところはないですか? どこか打ってるとか」
「ない」
「頭は? 打っていませんか?」
「大丈夫だ」
「それじゃ、足は? あ、腰は?」
突然、クスクスと立花さんが笑い出す。
「心配しすぎだ」