立花課長は今日も不機嫌
周りに人がいる手前、沙月に耳打ちすると
「えーっ!?」
沙月は大きな声を出した後、慌てて口元を両手で塞いで「ごめん」と謝る。
「もしかして、例の件の逆恨み?」
さすがにピンときたらしい。
私が頷くと、沙月は「ヒドイ!」と鼻息荒く怒り出した。
そうなると言い出しにくくなってしまうけれど、沙月に黙っているわけにはいかない。
「……実は、立花さんは私を庇って怪我して……」
「えーっ!?」
さっきよりも大きな声で沙月が驚く。
「入院とかいうことにはならなかったんだけど」
それだけは本当に救いだ。
「それで杏奈は? 大丈夫なの?」
私の身体のあちこちを手で撫で回す。