立花課長は今日も不機嫌

「あ、うん、ちょっと……」


適当に誤魔化そうとしたものの、沙月が私の顔を覗き込む。
目をそむけたところで、沙月の視線が追いかけて来た。


「誰かにプレゼント?」

「ち、違うよ。……ちょっと使ってみようかなと思っただけ」


私に万年筆は似合わない。
苦しすぎる言い訳に沙月の目が細められる。

もう一度目を反らすと、ますます怪しいと言って沙月が探りを入れてきた。


「時間つぶしの相手、見つけたの?」


コソコソと耳打ちをする。


……時間つぶしの相手?


何のことだろうと思ったのは一瞬。
この前の沙月のアパートでの会話から、それが彼氏のことを指しているんだとすぐに気付いた。

< 71 / 412 >

この作品をシェア

pagetop