立花課長は今日も不機嫌
「……あの、これ、交換した方がいいですよね」
置かれたままになっていた万年筆に手を伸ばす。
ところが、万年筆まであと数センチというところで、立花さんの手が私の手を引き留めた。
――っ。
「その必要はない」
「でも、」
「ペリカンのスーベレーン。初めて俺が万年筆を持ったのも、これだったよ」
懐かしそうに眺める。
「……そうなんですか」
その様子にホッと息を吐く。
……良かった。
気に入らないということじゃなかったんだ。
返されることも覚悟していただけに、喜びは倍増する。
そして、そっと離れた立花さんの手。
ひんやりとした感触が微かに残ったことで、それを名残惜しむ想いが顔をもたげてきそうになり、忘れようと口を開く。