女神の微笑み
次の日、そのことをユミは涙ながらアヤに告げる。伝え聞いたアヤが持っていたカッターナイフを手にとり、女達が楽しそうに話している休み時間の教室に入っていったかと思うと、主犯格の女の首もとにカッターナイフをつきつけ、容赦なく髪を引っ張り、そのナイフで引き裂いた。女は恐怖で泣きべそをかく。その時のアヤの迫力は、集まった者達を黙らせた。
それからはもう、二人に対する嫌がらせを考える者すらいなくなり、ユミのアヤを慕う気持ちがより強くなったのと同じくして、端から見てもそう感じとれるほど、二人の距離はより近づいていった。
ユミの中学校生活三年間での思い出は、ほとんどがアヤと共にあった。恋した時も、彼氏が出来た時も、どんな時だって恋に限らず全ての相談相手がアヤだった。辛い時も黙って文句一つ言わずにそばにいてくれたし、楽しい時は一緒に笑ったし、ケンカと言えるほどでもないが怒りあったりもした。でも決まってアヤはそこにいた、いてくれた。
ただ、今もなお、一つだけユミには気がかりなこととして、アヤからの相談や、アヤから悩みを聞かされたことが思い出の中にただの一つもないことがあった。

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