正義全う
第一話
「だ、誰か助けてくれ!!」

サラリーマンのオッサンの声が昼前の通学路に響く。オッサンを追い詰めているのはカニみたいな格好をしている化け物である。カニの怪人とか、正直恐れられることがあるのか不思議だ。横しか歩いていないじゃん、あいつ。まぁ、助けを呼んでいるし行ったほうがいいよな。嫌だなぁ、ダサい格好をしていくの。仲間が来るのを待って、仲間に任せるべきかな。それまで、横しか歩けないカニに襲われることもないだろう。電信柱の上でスマホを弄る。lineのグループに「●●高校前の通学路に怪人」と書いて送った。よし、来るまでモンカトやっておこう。

「おい、そこのブレザーを着た少年!?電信柱の上で見ているぐらいなら、助けてくれよ!!」

「ちぃ、バレた」

「舌打ちされた!?」と大きな声のオッサンを無視しようとイヤホンを耳に着けようとしたとき、後ろから頭を掴まれた。あ、ヤバイぞ。この無駄にゴツい手の厚さはあいつしかいない。後ろを向くと、赤いスーツを着た王道の正義の味方レッドである。

「あはは、何をしているのかなブラックくん?」

「えっと、…進化素材集めかな?」

頭に強烈な痛みが走る。「イタイイタイ」と同じ言葉を連呼しながら、頭から手を取ろうと頑張るが、中々に離してくれない。このままだと、脳の細胞が全て死ぬ。俺の限界が分かったのか、頭を掴んでいる手を離してくれた。

「お前なぁ、正義の味方なら目の前の人を助けろよ。見た目平凡のくせして、中身が駄目人間過ぎるだろう。ちゃんと、正義のヒーローやれよな」

不満を口にしながら、俺達のリーダーは俺を通りすぎて怪人のもとに行く。カニの怪人は近づいてきたものにいつも通りの台詞をはく。

「おまえ、何者だ!?」

「俺の名前はレッド。13区の正義のヒーローだ!!」

そう言って、レッドはカニの怪人と戦いを始めている。こんな敵ならレッド一人でも倒せるだろう。正義の味方かー、やりたくてやっていないのに。レッドが戦っている間、俺が正義の味方になるまでを語ろう。そう、あれは街の中を歩いているときだった。怪人とか、正義の味方とかいながらも、日本は忙しい毎日である。高校生である俺【黒崎竜太】は毎日通りに街のなかをブラブラと歩いている。家には騒がしい人たちがいるから、家にいるよりは街のほうが落ち着くからである。つまらないなぁと口癖のようにいいながら歩いていると、綺麗な金髪美女がチラシを俺に渡してきた。スリム体型というべき、モデル体型というべきかどちらも言えるスーツを着た美女は俺に優しい笑みでチラシのことについて一言言った。ヒーローになりませんかと。あの時はこんな過酷な仕事だとは思いもしないで俺は美女に騙されて頷いてしまった。



「黒崎、何で瞑想をしている。俺の手伝いをしろ。そのまま、座っているだけなら給料下げるぞー」

最後の言葉は正義の味方が言うことなのかという突っ込みを置いといて、給料下げられるのは困る。少ない給料でも、高校生には大金である。しょうがない、給料の為にダサい格好を我慢するか。俺は決心してスマホと似ている丸い円盤に手を添える。

「変身」

姿が全身黒いスーツにへと変わっていく。昔のテレビのヒーローアニメのブラックと同じ格好だ。はぁ、色んな変身スーツあるのに俺の会社は昔のスーツを選ぶんだろうか。ダサい格好でも変身スーツを着ると身体が二倍になるという優れものだ。一部変身も出来て電信柱に登りたいときも足だけを変身させると簡単である。難点でいえばその後の体力の減り量が凄まじい所かな。俺は電信柱から降りて、レッドの所に向かう。

「カニカニ、仲間が増えようが関係ない。泡だらけにしてやる。バブルシャワー」

カニの怪人の口から泡が出てきて、俺達の所に投球みたいに飛んできた。俺はレッドの前に立ち、泡のボールに手をかさす。ヒーローには変身スーツの他にそれぞれの特殊の能力がある。それは空を飛ぶことや炎を出すなどの超能力みたいなものだ。そして、俺の能力は。

「反射-リフレクト-」

泡のボールが見えない壁に跳ね返されて、カニの怪人の元へと戻ってくる。カニの怪人は驚いて、その場を避けることも出来なくて泡のボールにぶつかり爆発をした。俺の能力は相手の能力を跳ね返すだけというなの単純明快でとても使える技だ。まぁ、能力知られて物理できたら負けるけど。跳ね返した泡のボールのせいでカニの怪人は焼け焦げになりフラフラしている。あとはレッドがなんとかするだろう。俺は地面に座りこみ、最後の結末を見ることにした。

「限界突破-リミットブレイク-」

レッドは能力を使うと、高くジャンプをした。レッドの能力は変身スーツよりも身体能力がその倍数増えるという掛け算に掛け算をした感じだ。身体能力が上昇したレッドは電信柱の上にまで飛び、キックのポーズを取る。

「レッドキック!!」

レッドのネーミングセンスを疑う技名だか、本人は気に入っているので無視をしておこう。カニの怪人は真っ向にそれとぶつかり、吹き飛ばされて何故か爆破した。怪人の倒されてから爆発するというのは決まりなのだろうか。

「ありがとう、レッドとブラックよ。あなた達のお陰で助かりました」

「俺たちはこの13区を守る正義の味方です。貴方達の平和は俺達が守る!!」

はぁ、暑苦しい会話が広げている。早く、帰りたいなぁ。俺はスマホを触っていたら「ブラック」とレッドが呼び掛けてきた。「うーん?」と返事をすると、レッドは呆れながら俺に説教する。

「竜太、もうちょっと正義の味方に熱心なってくれないか。他のメンバーは仕事や部活で忙しいんだから、俺達しか出来ないんだぞ」

「赤屋さんはニートだから、暇なんでしょう。付き合っている俺も休みが欲しいですが」

「二、ニートと言うな!!ヒーローという仕事やっているんだろうか。給料だって、貰っている」

「月給二万円」と小声でレッド【赤屋烈】に聞こえる声で言う。その言葉に赤屋さんは落ち込んで地面に三角座りをする。大の大人が高校生に負けるなよ。溜め息をしながら、赤崎さんに手を伸ばす。

「ほら、ホームに帰りますよ」

「うん」と小っちゃく呟いて。俺の手を掴んで立ち上がる。俺達はヒーローの基地へと向かんのだった。
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