春色最中のコンチェルト
「最中ちゃん…」

困ったように静香おばさんが眉を下げる。

痛む頬も、青磁くんの刺すような視線も、何もかも痛い。

「こんなはずじゃ、なかった…」

漏れた声は不本意にも湿っていた。

「大丈夫やから。ね?」

静香おばさんが優しく頭を撫でてくれるけれど、視界が揺れて表情が見えない。

「入んぞ」

ぶっきらぼうに青磁くんが口を開き、私の荷物を全て奪ってのれんの奥に消えて行った。

大嫌いな青磁くんは、いつも優しい。
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