黄昏と嘘

「どうしてそんなこと知ってるのよ?」

「ん?
さっき廊下歩いてる時に先生が話してるの、聞こえた」

でもチサトにしてみればそれは朗報であり、寄り道しなければ、なんて思いは全くなかった。
アキラが早く帰ってくるかもしれない、その言葉にこころが騒ぎ出すけれど冷静を心がけてカノコに返事する。

「へえ・・・、そうなんだ」

「うーん・・・、あ、時間ないから、私先行くね!」

頼りないチサトの返事を聞いていたのか聞いていないのか、カノコは腕時計を見ながら返事をし、そしてチサトを置いたまま、慌てて駆け出した。

走り出すカノコの後ろ姿を見つめながらぽつんと立ち尽くすチサトだったが彼女も早く家に帰ろうとそう思い、早足で大学の門を出て駅に向かう。




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