黄昏と嘘

いたたまれない沈黙の中、ふたりは黙々と片付ける。
アキラのためと思ってやり始めたことだけれど、かえって迷惑かけてしまった。
そんな罪悪感の中、チサトは彼をちらっと見上げる。
微妙に機嫌悪そうな横顔が見えた。
何か話したほうがいいのだろうか。


「あの・・・先生・・・?」

「なんだ?」


やっぱり機嫌悪いようだ。その声のトーンでわかる。
どうやらいつもよりも機嫌が悪い。
それはそうだろう。
いつもキレイに片付いていたはずのキッチンがチサトによってこんなに汚されてしまったのだから。
チサトはとりあえず、なにかアキラのことを褒めれば少しは機嫌を直してくれるかもしれないと考えた。
冷静に考えればそんなことを言ったところで機嫌など余計に悪くなるかもしれないのに。


なんか私ってどうにかして先生褒めようとか、そんなことばっか・・・してるなあ。


「えーっと・・・先生って一人暮らしなのにすごいですね・・・」

「なにが、だ?」


チサトの方を向くことなくアキラは答える。
まあ、それはいつものことだ。


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