黄昏と嘘

どれくらい走ったのだろうか、

「ちょ……先生、息切れそうです……ってば……」

いつまでも走り続けるチサトはさすがに疲れてしまい、声も絶え絶えにアキラに言う。
そしてふと自分の腕を見た時、アキラに腕を掴まれているんだと理解する。


ずっと掴まれていたのだろうか・・・。


そう思った瞬間、チサトは息が切れてドキドキしているのか、それとも腕を掴まれてドキドキしているのか、わかならくなった。
ただアキラが掴んでいるこの腕が微熱をおびているのはわかった。


あの夜の時と同じだ。


ふたりは息を切らせ、しばらく走り続け、小さな雑居ビルの路地のところに逃げ込んだところで足を止めた。


あー……疲れた……。


チサトは足を止めても鼓動の高鳴りは治まらなかった。
すでにアキラはもう彼女から手を離しているというのに。
なんとか自分を落ち着かせようと腕を掴まれていたからじゃない、ずっと走り続けていたからだ、とチサトは思い込むようにする。
そう思っていないと熱で倒れそうになってしまうから。


こんなに長距離を必死になって走ったのはきっと中学の体育の授業以来かも。
だからまだ息が整ってもいないのは当たり前なんだから。
どうしよう、でも、私の顔、きっと真っ赤になってる。


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