黄昏と嘘
アキラの手が震える。
チサトはモモカから何を聞いたのか、そして思っていた以上に動揺する自分にここまでチサトに知られることを恐れていたのかと今更、理解する。
たったひとりの女性さえ、幸せにできず、哀しませ、苦しませ、嫌な別れ方をしてしまった。
「私は・・・先生は悪くないって思います。
だって先生は・・・」
やっぱり、聞くんじゃなかった。
先生の話なんか。
知ってまったために、またこうして嫌なことを言って先生を苦しめる。
うつむいたままそっと視線をアキラの方へと向けた。
表情まではわからなかったが、きっとアキラはいい思いをしてはいない、それだけははっきりとわかった。
しかし後悔してももう遅い。
そして彼女の言葉を遮るようにアキラが言った。
「話を聞いて・・・?それで?」
「それで・・・、あの、私は・・・」
「キミに何がわかる?」
冷たく答えるその言葉にさっきまでのやさしい感情など、どこにもなくなっていた。
チサトはそっと顔を上げる。
やっと確認できた彼の表情はとても哀しそうな辛そうなもので、それはあの春の日、アキラを見たLL教室のときと同じだものだと彼女は思った。