黄昏と嘘

「先生・・・、石田さんって知ってますか?
石田モモカさん」


チサトのその言葉にアキラの手が再び止まる。


「石田・・・モモカ・・・?
どうしてキミがその名前を・・・?」


どうして彼女がモモカのことを知っているのか、アキラはかなり驚いたものの、できるだけ冷静を装い、ゆっくりとチサトの方を見て答える。


「ここに来る前に一緒にルームシェアをしていたひとです。
今日は彼女に会ってて・・・。
それで先生のこと、聞きました」


なんで私、こんなこと言ってるんだろう。
こんなこと言ったら先生が困るってわかってるのに。
・・・言っちゃいけないのに。
先生を哀しませるようなことはもう二度と言わないって決めたのに。


「僕のこと・・・?」

そう答えるアキラの表情を確かめるのが怖くて、チサトはうつむきながらピアノから少しあとずさりしながら答える。
チサトはアキラを傷つけている、それは重々承知でいたつもりだった。
しかし彼女自身、もう言葉を止めることもできず、どうしていいのかわからなくなっていた。


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