黄昏と嘘
「先生・・・、すみませんでした。
・・・あの、私・・・」
そこまで言いかけて我慢していた涙が落ちる。
チサトはうつむき自分の表情を隠すがアキラは彼女の涙を見逃すことはなかった。
思わずアキラはチサトに手を伸ばそうとするが途中でそれを止めてしまう。
いつも嫌な態度でしか接してきていなかった自分、そのくせに自分が彼女に惹かれていることを恥じた。
何を今更、そんな感情が彼を襲う。
昨夜、あんなに近くにいたはずなのに、しかし冷静になり、それ以上、手をのばすことができなかった。
何かをチサトに伝えなければならないことはわかっている。
けれど何をどう言えばいいのか、わからない。
想いがたくさんありすぎて何から伝えればいいのかわからない。
チサトはこれ以上アキラと一緒にいることが苦しくて、彼に背を向けて部屋を出て行った。
「・・・あ、待ちな・・・」
出て行くチサトをアキラは呼び止めるが彼女は聞こえたのか、聞こえていなかったのかそのまま振り向くこともなかった。
アキラもまた戸惑いが拭いきれず、はっきりと彼女を止めることもできず、小さな声になってしまった。
チサトは自分の部屋に戻り、そのまま床に座り込み、気付けば声を殺して泣いていた。