黄昏と嘘
そして今夜も相変わらずひとりのチサトだった。
「ただいま・・・」
チサトは返事なんてないことがわかっていて小さな声で玄関の灯をつけ、
靴を脱ぎながらつぶやく。
まだ10時過ぎだもの、先生だって帰ってくるわけない。
っていうか帰ってこない可能性の方が高いもん。
しんと静まりかえったリビングへと入り、キッチンへ入る。
電気をつけてもなんだか暗く冷たく感じるのは季節のせいか、
それとも彼女自身の気持ちのせいか。
そんなことを思いながらコンビニで買った弁当を電子レンジに入れてタイマーを合わせる。
「こんな時間に晩ご飯は太るかなあ」
ここはチサトひとり。
自分の声はそのまま自分に返ってきてその後、静まりかえる。
聞こえるのは電子レンジの機械音だけ。
だからなのか一層、ひとりであることを実感して少し憂鬱になった。
チサトはゆっくりとカウンターの近くにある椅子に座り、肘をついてベランダの方を見つめる。
カーテンが開いたままになっているので外の景色がぼんやりと浮かび上がる。
先生は今、どこで何をしているのだろう。
論文を書くって言っていたからやはりどこかで作業をしているのだろうか。
授業を履修した頃よりも先生に好意を持っていることに気付いた頃よりも。
ここは先生のマンションで以前より近くにいるはずなのにどうしてだろうか、
前よりもとても遠くに感じる。
深いため息をついたとき電子レンジのタイマー音が鳴った。