ありふれた恋でいいから
……さっき、須藤に保険証を渡そうとした時に落ちた、縁結びのお守り。

まさか自分が貧血で倒れたり、こんな場所で須藤に再会するなんて思いもしなかったけど。
小さくて、重ささえ感じることもないこの存在が俺にもたらしてくれたものは大きくて。

俺が須藤を傷付けたのに。
俺が須藤を裏切ったのに。
彼女は、この縁結びのことを覚えていてくれた。


『結婚、するの』


遮るように告げられて俺の気持ちを伝えることは叶わなかったけれど。

2人でいたあの日の出来事が、彼女の記憶の中に残っていた。

ただそれだけで、呆れるほどに心は喜びに満ちていた。
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