ありふれた恋でいいから
私も、彼とミキちゃんは付き合っているんじゃないかと思っていた時期もあった。
実際、過去にはそんな噂もあった。

でも。

私たちが一緒にいた月日が、例え短い時間だったとしても。

「違う…。何かの間違いだよ……。畑野くんは…そんなことしない…しないよ……」

彼がそんな人ではないと知るには十分過ぎる程の時間だった筈だ。
ミキちゃんに心変わりしたんじゃないかとか、昨日までの彼を知っていれば持てるような疑念じゃない。

「信じてる。私、大丈夫。許せる…許すよ…だから、」

ごめんなんて言わないで。
私から離れていかないで。

ただ、うわ言の様に繰り返す私の呟きを。

「許すって言われたら、須藤に甘えそうになる今の自分が許せない」

断ち切るように遮った畑野くんは、やめて欲しいとばかりに頭を振った。
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