ありふれた恋でいいから
一緒に観たいと言われた映画が、須藤と一度だけ観に行った映画だと知った時はさすがに躊躇した。

須藤の泣き顔を誰にも見せたくなくて、ロビーで抱き締めたあの日を振り返りそうになる自分を、抑え切れる自信が無かったから。

だけど、だからこそ、その映画を梓と観たら、今度は違う想い出が増えるんじゃないかと思ったのも事実で。

自分自身が前に踏み出すきっかけになれば…、梓とのこの曖昧な関係にけじめを付けられれば…、そんな思いが俺の中に芽生えていた。

だからってまさか、須藤に偶然出会うなんて思いもしなかったけど。

追いかけられない事も、呼び止められない事も、それはそれで現実を見据える事にはなった。


きっと須藤も。
そして俺も。
もうそれぞれの今を生きてるんだ。
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