ありふれた恋でいいから
『脩二のことが好きなの』

同じ学科で行動するグループの１人だった梓に告白されたのは、大学２年になった頃。

当時須藤のことで絶望の渦の中にいた俺は、当然のことながら断ろうとした。

けれど。

『やっぱり、無かった事にして？』

学内で一緒に過ごす時間が多いから気まずくなりたくない、と梓は俺の返事を遮って。

以来、彼女ではないけど一番親しい女友達…そんな立ち位置で梓は俺の隣にいるようになった。

他の奴らから人気はあるのに誰とも付き合おうとしない彼女を見て、周りの友人たちからは、あとは俺の気持ち次第だと茶化される事が多かったけど。

無かった事にしてと言われた以上、俺は受け入れる事も断る事も出来ない微妙な立場で。

いつの間にか二人で出掛ける機会が増えても、梓が何も言ってこない以上、俺は曖昧な関係を保つしか無かった。
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