ありふれた恋でいいから
「…の…実乃、大丈夫?」

心配そうに呼びかける声が、私を現実に引き戻す。

大好きだった彼の声ではない別の声が、今見たものを夢だと知らしめて。

「あ…慶介、さん…?」

覚醒された意識がまだふらふらと夢と現実を彷徨う感覚の中。
零れ落ちる自分の声色は、安堵なのか落胆なのか分からない。

「どうした?酷く魘されてたけど…」

それでも、包まれる体温は私の心を次第に落ち着かせてくれて。

「ごめんなさい…ちょっと怖い夢見ちゃったのかも」

ゆっくりと私の顔をなぞる優しい掌に笑みを漏らしながら、そっと寄り添った。
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