ありふれた恋でいいから
都内でご両親と個人病院を開業する慶介さんと出会ったのは、私が26歳の時。

総合病院の事務職員として勤めて4年が過ぎた頃だった。



内科で急に欠員が出て、彼がピンチヒッターの非常勤務医として赴任した初日に。

『今日からお世話になる三原と申しますが…』

総合受付にそう言って現れた慶介さんを私がうっかり入院患者だと勘違いしたのがきっかけ。


医者という地位に奢らず、患者さんにもスタッフにも丁寧な物腰で対応する慶介さんの評判はすぐに広まって。

時折交わす会話から読書が趣味だという共通点も見つかると、いつしか二人で会う約束をするほど親しくなっていた。
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