☆子犬系男子にご用心☆



「ちょっと待ってね。あ、そうだわ。お名前きいてなかったわね」

「あ、市川結芽です・・・」

「結芽ちゃんね。よろしくね。臣の母です」



やっぱりお母さんだった。
お母さんはリビングに行くと、冷蔵庫を開けたりゴソゴソと動き出す。
ハッとして私は立ち上がりリビングに向かった。



「お手伝いします」

「まあ、いいの?」

「はい・・・」




なんで、なにも言わないんだろう。
きっと私のお母さんなら、相手の男の子に“非常識ね”とか絶対にきつくあたる。
でも、本当は心の中ではそう思ってるのかも。
皆が皆、想ってることを言えるわけじゃないもんね。



早いところ帰ろう。
ちゃんと片づけて、きちんと誠心誠意謝って、それから・・・。




「なんだか、嬉しいわ」

「え?」

「うち、一人っ子で男の子でしょう?臣はこんな風に手伝ってくれたりはしないし。女の子とこうやってお話しながら料理を作るの夢だったの」

「夢・・・」




ニコニコと、濁りのない笑顔で。
私はさらに戸惑うばかり。





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