龍華寺 四葉と書いて、救世主と読め。

調理実習








ザク、ザク、ザク……


「ねぇ、危ないよ、やめよ?」

ナゴミの声が震えるのを無視して、四葉は黙々とその作業を続けた。

何も聞こえてないかのように一心不乱に。

時々涙を拭ったり、鼻をすする以外は、延々と同じ作業を繰り返している。

「しょ、小学生が刃物とかやっぱり……」

「……っ!」

「?クロちゃん?どうし……」

四葉の指先には、真っ赤になった包丁と、赤い飛沫が飛んだ涙目の四葉の顔。

思わずナゴミは後ずさった。

「ひっ!」







「うわ、やっちったな……こんな所にケチャップ置いたの誰だよ、畜生」

顔に付いた赤い飛沫……ケチャップを舌で舐めとりながら、四葉は面倒くさそうにナゴミの方を振り返る。

「つか、大げさだっての、調理実習で包丁使わないでどうすんだよ」
< 53 / 99 >

この作品をシェア

pagetop