龍華寺 四葉と書いて、救世主と読め。

そう言う四葉はいつもの長すぎるツインテールをお団子にまとめ、兄のお下がりらしきシンプルな三角巾とエプロンというスタイルだ。

普段と違う可愛い服装と人殺しのような目付きのギャップが恐ろしくて、ナゴミはどうも落ち着けない。

「だ、だって切ってる時のクロちゃん、顔怖いんだもん!」

「そりゃ玉ねぎ切ってんだもん、涙出そうで顔もこわばるよ」

調理台の上には、確かにまな板と刻まれた玉ねぎが乗っていた。

そう。現在四葉とナゴミの所属する六年花組は、家庭科の授業で調理実習の真っ最中なのである。

「しっかし、高度過ぎじゃないの?小学生の調理実習にオムライスなんて難しくない?しかも学芸会も近いのに、先生ってば無理難題押し付けすぎでしょ」

黒板には堂々と『今日作るもの:オムライス』と書かれてる。

普通、昼食の事を考慮してカップケーキとかになる所だが、この学園はこういう所がどうもおかしい。

「良いんじゃない?確かに難しいけど、一応美味しいし……」

新妻のようなフリフリ白エプロンの女子が、ケチャップを片付ける。

「多少失敗しても、ただの卵焼きとチキンライスになるだけだしー」

炊飯器のご飯を混ぜながら、迷彩柄のエプロンの女子も賛同した。

「栃本(とちもと)と鷹嘴(たかのはし)はポジティブだな……」
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