引っ越し先はあたしの隣⁉︎
隼田くんから目を離し前を向いてぼーっとそんなことを考えていると、コツ、と頭を叩かれた。
げ。
見上げてみると目の前に先生が。
笑ってるけど、目は笑ってない。
「木下、いまの聞いてたかー」
「あ、えーっと。……す、すみません」
「だよねー、はい」
自分に差し出されたソレを凝視した。
ま、そうなるよねー。あは。
差し出されたチョークを持って黒板の前に立つ。
うわー、全然わかんないよ。
目の前に書かれてあるのを見上げてみるとズラリと並んだへんな記号と数字。
そういまは数学の授業なんだ。
最悪。数学一番ニガテな科目なのに。
しかも、今日にかぎって難問だなんて信じられないっ。
どーしよ。みんな待ってるよー!あたしが書かないと次に進めないじゃん。
……みんなの視線が痛い。
あたし、人前に立って目立つことが大の苦手なんだよね。一応元気系なんだけれど。
スポーツで目立つってことは大したことないんだけど、こう『しーん』とした雰囲気のなかとか発表とか本当に居心地悪くてしょうがない。
はやくっ。早く書かなきゃ。
ひとりで焦ってると、後ろからぽんと肩を叩かれた。
ほっ。先生か。よかった。
……え。
後ろを振り向くとそこには彼がいた。