“毒”から始まる恋もある
「なに、ちゃんと挨拶もしていなかったからさ。これ、サービス品だよ。れんこんフライ。シャキシャキして旨いよ」
「あ、確かに美味しそう」
揚げたてなのか、いい匂い。青のりをまぶしてあるのかな。
店長さんはニコニコしつつ、私をしっかり観察している。
なんか、彼氏の親にチェックされているみたいで落ち着かないわ。
「モニターもして頂いてるそうで。どうです? ウチの料理は」
「美味しいです。それぞれの鍋にテーマがある感じがして、毎回楽しんでます。
……ただ、それだけにどれとどれを合わせるとまとまりがいいとかが分からなくて。メニューにおすすめセットみたいなのを書いてもらえると参考になるかも知れないです」
いつもの調子でつらつら話していると、店長さんが笑い出した。
「店長! 失礼ですよ」
「はは。ごめんごめん。こういうタイプか。なるほどねぇ」
店長さんは楽しそうに私をもう一度見つめ、軽く頭をさげた。
「これからもご贔屓にお願いします」
「あ、はい」
「じゃあ、光流。頑張って」
「うるさいですよ。普段出てこないくせにどうしてこういう時ばっかり」
「心配してるんじゃないか」
「いらぬ心配です」
数家くんは立ち上がり、追い立てるように店長さんの背中を押す。
「すいませんね、刈谷さん」
「ううん。なんていうか、独特だよね、店長さん」
「初対面の人は驚くほうが多いですね。だから俺が外向きのことを任されるんですよ。実際、取引先とだと店長が出て行くと揉めることのほうが多いので、よく俺が代理ででます」
「あら。大変ね」