“毒”から始まる恋もある
「義姉でもいいじゃないですか。俺も王子って言うよりは召使って柄です。シンデレラの義姉と王宮の召使。そんなロマンスも多分悪くはありませんよ」
ずっと心にひっかかっていた自分の嫌な、でも捨てられないところ。
こんな風に笑って受け入れてもらえるなら、私も自分が好きになれる。
「俺にはちゃんとお姫様ですよ。口が悪くて可愛い、他に二人といない人です」
「わ、わ、分かったから下ろしてよ」
嬉しいけど、恥ずかしいって。
人前でそんなこと言える貴方も、実は相当神経太いわよ。
「仕方ないなぁ」
抱き上げられたまま、彼は壁沿いに移動する。
何処に行っても目立つって、勘弁して。
喫煙スペースの前、たまたま中にも人はおらず、壁で展望客からも隠れるところ。
そんな場所を見つけた彼は、ようやくそこで私を降ろす。
「恥ずかしかった!」
「たまには楽しくない? どちらかと言うといつも裏方だったから、急に自分が主人公になったみたいだ」
「あ、それは私もそうかも」
「でしょ? どうせ知り合いなんかいないでしょう」
ふわりと笑う彼が、すっと手をつないでくる。
誰と体を重ねた時より、ずっと確かに繋がっている感じがする。
満足して見上げると、数家くんはちょっと困ったように頭をかいた。
「……とはいえ、俺、自信は無いんだけど。休みは合わないし。いつキレられるかとヒヤヒヤする」
言われてみればそうだ。
彼は接客業だもの、土日なんて忙しいんだろう。
ううう、そうか、失念していたわ。
だけど。
「キレる……ねぇ。毎日電話くれるんなら我慢するわ」
「うん。時間、遅くなるかもしれないけど。電話ができない時はメールする」
誰かに好きになってもらうために、沢山努力をしてきたつもりだ。
だったら、彼と続けるための努力も、きっと出来るはず。
「私も努力するわ。時間が合わないなら、数分でもいいじゃない。会いたくなったら食べに行くわよ。そうしたら顔は見れるわ」
数家くんは私の頭に自分の頬を載せる。
「……そういうところが凄く好きだ」
うわあ。半端なくドキドキする。
彼の声が私の中に浸透して、体熱を上げていく。