“毒”から始まる恋もある
「月末にお願いしたいんですが、まだ人数はもう少し相談したいんですけど」
「決まったら早めにお伝えいただければ。会社の宴会という形でよろしいですか?」
「地方の人も集まるちょっと固めの会になるかと思うんですが」
「畏まりました。失礼ですがお名前伺ってよろしいですか?」
なんとか話は進んだようだ。
菫が何やら書いている内に、私はちょうど半熟になった卵鍋をつつく。
「あ、お取りしますよ」
すかさず数家さんが私と菫の分を取り分けた。
なーんか、ホント気が利くわよね。全方向抜かりなしって感じ。
「ではご連絡お待ちしております」
菫の連絡先をゲットして、数家さんは去っていく。
「ありがとうございましたぁ、刈谷先輩。うまくお話できました」
「別に。とろくさいから面倒になっただけよ。里中くんにも頼まれたしさぁ」
そう言ってから、化粧室に行き、鏡の前で自分の姿をチェックする。
あー、ちょっとまつげが下がってきてる。湯気って化粧には大敵だからなぁ。
菫、結構酔ってるみたいだけど大丈夫かしら。
送るのとか面倒臭いな。
心配症の彼氏、仕事終わったら電話とかしてきそうだし。そっちに任せるかぁ。
あんな程度で酔えるなんていいわね。
私なんて前後不覚になろうと思ったら何杯飲まなきゃいけないか。
記憶が無くなったのは谷崎としちゃった時だけだけど。あの時は、日本酒を一本空ける勢いで飲んだもんなぁ。
やけ酒なんてするときは金がかかって仕方ないわ。