“毒”から始まる恋もある
「後もう一人、徳田さんっていう男の方がいるんですよ」
紫藤さんが、楽しそうに話しだす。
「明るくてとても話しやすい方です。刈谷さんも直ぐ馴染めると思いますよ」
うふふ、なんて声が続きそう。
あーやっぱりなんかこの子苦手。
大体こんなに若いのにモニターとかどういう経緯でなるわけ?
「徳田さんは今日は遅れるそうなので、先にはじめましょうか。改めて、担当の数家です。本日はお忙しい中お時間を頂きありがとうございます。これからお出ししますが、ぜひ忌憚のないご意見を聞かせていただけたらと思います」
数家さんが、お冷とおしぼりを並べたあと、挨拶をする。
私も他の二人も、小さく頭を下げた。
「こちらが見ていただきたいポイントになります。まずは見た目。それから味。舌触りや匂いなど、気になることは何でも教えて下さい。直接言いにくいことは後ほどこちらの用紙に記載して頂いても構いません」
渡された用紙には項目ごとに1から5までの数字が書いてある。数値が多いほうが高い評価というわけだ。
その下に空欄があり、自由なご意見はここに、ということらしい。
私達がそれに目を通し終えた頃、彼は厨房の方に指示を出した。
今度は女性定員が鍋を持ってやってくる。
黒っぽい鉄鍋だ。
木の蓋がされていて、漏れ出てくる匂いは予想外にコンソメっぽい。でもそれにしては芳醇というか。なんだろ、この香り。