“毒”から始まる恋もある


「参考になります。やっぱり刈谷さんに頼んでよかった」


そして思いがけないような言葉をこぼされる。

まあ悪い気はしない。
普段煙たがられる毒舌がこんな役に立つなんてね。


「それと今日のとは違うけど、やっぱり誕生日ケーキのサービスは辞めたほうが……」

「いやー、遅れまして堪忍」


調子に乗ってまくしたてようとした時、入り口の扉が開いた。

立ち上がろうとした数家さんを制して、女性店員が迎えに行く。


「徳田様、お待ちしておりました」

「おお、つぐみちゃん、すまんな。遅なって」

「大丈夫ですよ。どうぞこちらへ」


大きな声で女性店員と会話してる。
関西弁……なのかな。
というか、あの店員、つぐみっていうのか。


男の姿は、数家さんの陰になっていて私からは見えない。
やがて近づいてくると、数家さんが正面を向いて迎え入れる体制を整えた。


「いらっしゃいませ」

「ああ、すまんすまん。遅なりまして」

「徳田様、今日は新しいお仲間がいるんですよ。こちらの刈谷様です」

「おお、ええな、美人さんや」


男の瞳が私を捉えて、思わず黙りこんでしまった。


なにこれ、イケメン。

柔らかそうなくしゃくしゃの髪は社会人にしてはちょっと明るすぎる茶色だけど、綺麗なたまご型の輪郭にスッと通った鼻、タレ目だけどそれがまた上手くまとまっていて格好いい。

それに、私の事美人さんって言ったし! 

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