“毒”から始まる恋もある



 土曜日はあいにくの雨天。

せっかく髪も綺麗に巻いたのに、湿気のせいで潰れ気味だ。足元も水ハネが気になって仕方ない。ああ、ストッキングに水玉模様がついちゃった。

 今日はレース切替のクリーム色のプルオーバーに、白地に黒でレトロなフラワープリントが施されたミニスカート。店員さんも「これならミニでも清楚系でいけます」といった組み合わせだ。
それにまだ肌寒いのでジャケットを羽織る事により年齢相応の格好になる。

かなりの気合を入れたので、褒めて欲しくて仕方ない。

徳田さん、早く来ないかなー。


映画館の前で待ち合わせにしたのだけれど、屋根があまり出っ張っていなくて、雨よけにならない。
仕方なく傘の花を咲かせているわけだけど、雫が足元に跳ねるから冷たいのよ。


約束の時間を五分ほど過ぎた頃、百円傘を差した徳田さんがやってきた。


「刈谷ちゃん、すまんすまん。雨やむかと思って持ってこんかったら、なんややまんと酷なって。慌てて買うてきたんや、傘」

「そうだったんですか。電話してくれれば私迎えに行ったのに」


そしたら相合傘だったのにさー。
徳田さんはキョトンとした後、指を鳴らしながらくうっと唸る。


「その手があったか。気づかんかったわ。惜しかった」


その反応に、気分はアッサリ上昇。

恋をするって楽しいよね。
こんな簡単にごきげんになれる自分がなんだか可愛く思えてくる。

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