“毒”から始まる恋もある


「それにちゃんと返事きいてへんしな」


体の向きを変えて、彼がベッドに乗り上げる。
そして上から私を見下ろしている。これはなかなかに良い構図。


「返事、……しなかった?」

「酔っぱらいの言うこと信用できんし」


じゃあ酔ってる時に聞くなよって気もするけど。


「酔って無くても返事は同じよ。“喜んで”」

「そっか、なら……」


彼の腕が私の体をまたぐ。
そうすることで、私は掛け布団の上から抑えこまれたような状態になった。


「……する?」


今度は強引。

酔いが冷めてから聞かれると、頷きづらいな。
酒のせいにはできないから、思いっきり肉食女をアピールしているようで。

でも。


「……うん」


三十ですから。恥ずかしがってる場合じゃないし、せっかくゲット出来たいい男離したくないし。
貞操観念とかは私はあんまりない。むしろ、試してみなきゃ分からないって意識のほうが強い。


「史……」


名前を呼ばれて、目をとじる。彼の触り心地の良い指が、私の頬を撫でた。
と、直ぐに息が交差する。抑えこまれた唇が熱いくらいだ。キスってこんなに気持ちよかったかな。

でも、角度を変えるために首をちょっと動かすと、それだけで頭が痛い。
顎や首を撫でられて、心地よくなりそうなのに頭痛がそれを許さない。

ああ、シたいけどなぁ、私も。
でもやっぱ無理かも。気持ち悪い。


「あの、やっぱりごめん」

「どうしたん?」


少し傷ついたような顔で、彼は私を見つめた。

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