“毒”から始まる恋もある
*
週明け、菫はごきげんだ。
ファイルで笑顔を隠しているつもりだろうが、浮かれた気配は全身からみなぎっている。
「刈谷先輩、大成功でした」
「……なんだっけ」
「やだもう、忘れたんですか。親睦会の話です。【U TA GE】のあの店員さん、凄く気を回してくださって。皆さんに好評でした」
「ああ、数家くん?」
「宜しく言っておいてくださいね」
何故私が。
別に数家くんと私用で話すことなんかないっつーの。
「あそこ、四月半ばくらいから新製品出すんですって。試食食べたけど美味しかったわ。始まったら菫行く?」
「行きたいです」
「じゃあ今度一緒に行きましょ」
「はい!」
うっかり菫を誘っちゃったけど、それにはもれなくあの彼氏がついてくるのかな。
だったら見せびらかすかぁ?
私も吹っ切れたのよってとこみせたいしなぁ。
「ダブルデートにする?」
「え?」
「だーかーらー。私も彼氏出来たのよ」
菫の顔が、ぱあっと晴れ渡った。
「本当ですか! おめでとうございます」
「馬鹿っ、声がでかいわよ」
慌てて菫の口を塞ぐ。
向かいの席にいた舞波くんが何事かと覗きこんできた。
「なんだ、刈谷。おめでたか?」
「んなわけ無いでしょ。おめでたは舞波くんのとこじゃないの」
「なんで知ってるんだよ。まだ誰にも言ってねーのに」
「えーそうなんですか?」
別の女子社員から歓声があがる。
よし、これで騒ぎの中心は舞波くんになったはず。
週明け、菫はごきげんだ。
ファイルで笑顔を隠しているつもりだろうが、浮かれた気配は全身からみなぎっている。
「刈谷先輩、大成功でした」
「……なんだっけ」
「やだもう、忘れたんですか。親睦会の話です。【U TA GE】のあの店員さん、凄く気を回してくださって。皆さんに好評でした」
「ああ、数家くん?」
「宜しく言っておいてくださいね」
何故私が。
別に数家くんと私用で話すことなんかないっつーの。
「あそこ、四月半ばくらいから新製品出すんですって。試食食べたけど美味しかったわ。始まったら菫行く?」
「行きたいです」
「じゃあ今度一緒に行きましょ」
「はい!」
うっかり菫を誘っちゃったけど、それにはもれなくあの彼氏がついてくるのかな。
だったら見せびらかすかぁ?
私も吹っ切れたのよってとこみせたいしなぁ。
「ダブルデートにする?」
「え?」
「だーかーらー。私も彼氏出来たのよ」
菫の顔が、ぱあっと晴れ渡った。
「本当ですか! おめでとうございます」
「馬鹿っ、声がでかいわよ」
慌てて菫の口を塞ぐ。
向かいの席にいた舞波くんが何事かと覗きこんできた。
「なんだ、刈谷。おめでたか?」
「んなわけ無いでしょ。おめでたは舞波くんのとこじゃないの」
「なんで知ってるんだよ。まだ誰にも言ってねーのに」
「えーそうなんですか?」
別の女子社員から歓声があがる。
よし、これで騒ぎの中心は舞波くんになったはず。