“毒”から始まる恋もある
それから家に帰ってもう一度ぐっすり眠り、ようやく体調が良くなってきたのは夕方だ。
せっかくの日曜を台無しにしてしまった。
はあ、と溜息をつくと、彼から電話がかかってくる。
『史ちゃん? 今朝、すまんかったな』
ホントよ。
女置いて一人で帰るとかあり得ないって。
不満を口の中に押しとどめて、渋々声を絞り出した。
「……急用だったの?」
『んー、仕事関係で。ほんまごめん』
「トラブル?」
『そんなとこ。でもなんとかなったし』
置いて行かれた恨みはないわけじゃないけど、嫌われたくはないし。
「……いいわ。でも今度同じようなことがあったら起こしてよ。置いて行かれるのは嫌だわ」
『分かった。ほんまごめんな。今度埋め合わせするわ』
「うん」
まだ納得ができないまま頷いた。
我慢よ。まだ付き合い始めたばっかりだし、我の強い自分を出しちゃダメ。
『ええ女やなぁ、史ちゃん』
そんなこと言われて、喜ばない女などいない。
急降下だった気持ちは、あっという間に浮上する。我ながら単純だ。
まあいいわ。そんなに直ぐ阿吽の呼吸を身につけれるわけがないし。
「じゃあ、楽しい話をしましょ?」
「せやな、ところで史ちゃんテレビとか何見るん?」
明るい彼の声に引きずられるように、私もよく見るバラエティ番組の話を面白おかしく続けた。