あなたを待っている

15

片付けが終わって落ち着いたところで、たなくんはシャワーを浴びると行ってバスルームに向かった。

私は内見時に一目惚れしたベランダに出た。

少しだけ高台になっている場所にあるこのマンションの夜景は、すごく綺麗だった。

1人で夜景を眺めながら、今日までのことを思い出していた。

たなくんに出逢い、好きになったこと。

たなくんには同棲している彼女がいて、叶わない想いを、どうすることもできずにいたこと。

初めてたなくんの部屋に行った日に告白してもらったこと。

お互いに好きなのに触れることもできず苦しかった日々。

待つと言ったのに、千鶴さんとの約束の期限がいつまでかわからないことが不安になってしまうこともあった。

不安に押し潰されそうになって、たなくんを諦めて他の人を好きになりたいと思ったこと。

でも、そんな時には、気づくとたなくんが隣にいて私への想いを言葉にしてくれた。

たなくんの言葉を聞いて、もう少しだけがんばろうって思ったこと。


あんなに苦しかった日々が、嘘みたいって思う。

だって、大好きな人と結婚できたんだもん。

左手の薬指の指輪に触れながら幸せを噛み締める。
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