あなたを待っている
『由希美。どうしたの?こんなところで。』

バスルームから戻ってきたたなくんに声をかけられた。

『たなくん…。ここの夜景、本当、綺麗だなぁって…。たなくんも、そう思わない?』

『綺麗だよな。5階に決めて良かったよ。』

『うん。』

『…由希美…もう俺達、結婚して同じ名字になったんだけど、いつまで俺は“たなくん”なの?』

たなくんは、私の肩を抱きながら笑う。

『あっ、そうだよね…。でも何て呼べばいいの?』

『浩さん。ひろちゃん。ひろ。何て呼びたい?』

たなくんの提案した呼び方でたなくんを呼んでみる。

『浩さん。』

『何か固いなぁ。』

たなくんは笑いながら言った。

『じゃ、ひろちゃんは?』

『う~ん…。何か違う。』

『違うって何?』

『俺、“ちゃん”で呼ばれるタイプじゃないなって。』

『何それ?タイプって…。じゃ、ひろ?』

『うん。いいねぇ。それが一番しっくりくる。』
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