願う場所、望む奇跡



あのキス以来、2人きりで話すことがなかった。

母親に迷惑かけるからと、3人でいる時は話した。

だけど、2人になると意識するのか、すぐ自室にこもった。

あながち、キスしたのも悪くなかったかもしれない。

こうやって意識してくれるのは、俺にとって前進したように思えるから。


それでも、こんなところで見られるのは想定外のこと。

悠長にしている場合じゃない。

なりふり構っていられないか。



「義哉くん、結局あの人、誰なの?」



未だ不満そうに言う。

悠弥の名前を出したはずなのに、気づいていないらしい。



「なぁ……少し寄り道しねぇ?」


「え?もちろん!行こうっ」



俺の言葉に、さっきの怒りはどこへやら。

満面の笑みで嬉しそうに言う。

不本意ではあるけど、夏希に知られた以上、のんびりはしていられないから。

早いとこ片づけよう。

噂はいずれ消える。

そんなこと、気にするだけ無駄と思って。

今の状況なら、信用する人も少ないだろうから。




< 133 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop