螺旋上の赤
凛に気付いた有が逃げようとするも、凛の突入速度はそれはもう凄まじかった。
有の努力も空しく、あえなく的中。

ガシャン!ガラガラガラガラ

私は有の自転車に見事命中した。クリーンヒットと言って良いだろう。

(いたたぁ……いつも誰もいないから、油断してたわ。)

「何でアンタ、ここ使ってんの……こんな不便な場所にあるのに。」

文句を言ってやろうと顔を上げて、驚いた。

「あれ、その髪……。」

クシュクシュっとして、ちょっと耳にかかるくらいの長さで、お洒落だった髪の毛が見事な短髪。坊主に近いくらい。

「どうしたの?それ。」

気になった私が聞くと、彼は

「別に……特に理由はねぇよ。何でもいいだろ……。」

有は目線を逸らしながら、呟くように言った。
最初にここで会った時とは違い、無愛想な感じがする。

(イケメンが台無しとは言わないが、女受けは良くは無さそう。
 私は短髪も好きだけど……。)
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