螺旋上の赤
「……変なの。」

「ふん……。」

私が茶化すと、不機嫌そうに立ち上がりズボンの汚れをはたいていた。

「その髪型、小学生みたいじゃん。」

((はっ!))

2人の間の空気が固まった……様に感じた。
これを俗世間では『KY』と言うのだろう。
私はこの沈黙に息を殺した。

有がさっきとはうって変わって、私の目を見つめている。
早くなった鼓動ごと、その目に吸い込まれて行きたくなる。

「——あれ?凛こそ、その髪は……?」

今日はちょっと野暮用でニットを被っているのだが、
その不自然さ、遂に気づかれたようだ。

(くっ、ヤバいわね。)

ニット帽の両端をガッチリ掴み、防御体制を整える。
明後日の方向を向いて、有の言葉は聞かなかったことにした。
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