矯国戦慄 ~李国と阿弥国の陰謀~

「お呼びでしょうか?馬羅斉殿」

階段を下りきり、馬羅斉の背に向かって、そう問いかける。

「おお…白俊。
ようやく来たか。」

そう言って馬羅斉は俺と向き合う。

俺より背は低く、白髪混じりの黒髪、顔付きは厳つく厳しい。頑固さが見てとれるような人である。

「はい。…緊急の御用だと察しましたが」

そう聞く俺に、馬羅斉は厳つい顔にしわを寄せて、う~んと唸る。

「実は、李王が阿弥国に戦争をしかけるらしいのだ」

「……っ!!なんですって!?」

李王が阿弥国に戦争をしかける……

それは今の時代にとって普通なこと。


だが、今の李国は10日間の連戦から昨日戻ったばかりで、小細工な策を操る阿弥国との戦争の勝率などたかが知れているのだ。


この状態で戦えば、士気が下がる一方で勝てるなんて…言える状況では無かった。

「馬羅斉殿、貴方もお分かりの筈です。
今はどの部隊も連戦の疲労で限界です」

李王がなにを考えているのか分からないが、これ以上無理はさせれない。

「このままの状態で戦ったとして、我らの勝利はないです」


その俺の言い分に馬羅斉はしわをかなり寄せ、怒りの表情が露(あらわ)になる。


「白俊……李王の為に死するが兵の役目だ。
李王がやるなれば、私はそれ相応の策を考えれば良いだけなのだ」

なにを言う!策を考えたとして、兵が疲労仕切っていれば、やるものも出来はしない!

「それとも白俊。
私の策に気に入らぬとこでもあるか?」

「い、いえ。そんなことは断じて」

馬羅斉の策は確かにどの国との戦争でも通用はする。
それは李王を始め、偉い位の人達が認めているほど実力がある。

「では、白俊よ。李王からの指示があるであろう。
出撃の準備を整えておくのだ」

そう言い捨てて、馬羅斉は立ち去っていった。

俺は悔しさの余り、拳を広間の地面に殴り付ける。

「まるで……死ねと言わんばかりではないか……!」

どれだけ策を講じようが、兵は犠牲になる。

生き残るために戦う兵達にとっては避けられない道。

この疲労の状態では、敗けは目に見えている。

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