エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
一時期は髪の毛が全部抜けたこともあったし。
今は息子の冒険心とおしゃれ心を尊重しよう。

「ジェルはお父さんが貸してくれたんだー」
「そう。なかなか・・・似合ってるよ」
「ありがと。じゃあ行ってきま・・・」
「秀っ!」
「なに」
「今日、参観日だよな?」
「来週の金曜だけど」

二人そろって答えた私と秀一郎を交互に見る善の顔は、ちょっとばかり間抜けで、つい私の笑みが浮かんでしまう。

「え。まじ?」
「マジ」
「参観日は22日だよ」
「うをーっ!俺、今日が22日だと思ってたぜーっ!もう朝からテンパりすぎだ、俺」
「・・・だから今日は朝から緊張してたんだ」と呟いた私に、善はハハハッと笑ってごまかした。

「間違ってお父さんひとり来ても、教室パニックになるだけだから」
「いい余興になるんじゃね?」
「かもね」と言う秀一郎は、至って冷静だ。

ロックバンドのドラマーという善の職業と、自分の父親が「RAIZ(ライズ)」という日本一売れてるロックバンドのメンバーで、そこそこの有名人だということも、息子はちゃんと受け入れている。

だからなのか。
いつの間にか秀一郎は、善のことを「お父さん」と呼ぶようになっていた。

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