エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
絶望という暗闇に突き落とされた中、やっと一筋の希望の光が見えたのに。
なんで善は、それを打ち砕くようなことを言うの・・・。

でも、善はあの子の父親だ。
10歳の息子がいると突然聞かされた挙句、いきなり10歳の息子の父親だと分かっても、その事実から逃げることなく、「息子に会いたい」と言ってくれたことは、とても嬉しい。

でも、秀一郎に会って、それからどうするつもり?
今後も秀一郎にかかわるつもりなの?

咎めるような視線で見る私に、善は困ったなぁというような苦笑を浮かべた。

「秀が気づかないよう、コソッと姿見るだけでもいいから」

と言うことは、やっぱり善は、今後、秀一郎にかかわるつもりはないんだ。

それでいいと思いながら、少し・・・落胆して。
相反する気持ちが渦巻く中、「頼む。お願いだ」と懇願する善の顔が必死に見えたのは、気のせいかもしれない。
でも、そんな善の顔に心を動かされた私は、「それなら・・・うん。分かった」と、答えていた。

< 47 / 183 >

この作品をシェア

pagetop