エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「つきあってる彼女にまで、秀一郎のことを秘密にすることはできないって分かってる。だから善が押川こうこに秀一郎のことを話したことを、責めるつもりはないの。でも・・・」
「俺は別れるつもりでこうこちゃんに話した。あっちは納得できなくて、病院まで来ちまったんだが・・・でも俺たち別れた」
「・・・え。そん、な・・・私のせい・・・」
「違う・・・とは言いきれないんだが、それでも俺は、こうこちゃんと結婚することまでまだ考えてなかったし、こうこちゃんも25だからかなぁ、今は俺と結婚するより、女優としてのキャリアを積むことの方が大事だって。ま、俺じゃなくても、仮に誰かと結婚すれば、やっぱ女優業に専念することは難しくなるだろうし。それに、いきなり10歳の息子の母親になることにも抵抗あった・・・」
「ちょ、っと。母親って・・・秀一郎の母親は、私だけど」
「分かってるよ」
「秀一郎の母親は、私なのよ。私以外にありえないのよ!」
「そのとおり。アキちゃんの言うとおりだ」

興奮して声を荒げる私をなだめるように善は言うと、私の二の腕にそっと大きな手を置いた。

< 88 / 183 >

この作品をシェア

pagetop