アーバン・ウォーリア

三話・夕食はみんなで食べるのが一番だと思う。

潜伏場所に戻り本部との交信を終えた私はカーテンを開けて双眼鏡で彼の家の周囲を哨戒する。
いつ、敵が現れるかわからないからだ。
今晩も徹夜になるかもしれない。だが、増援が来るまでの辛抱だ。
今回の任務で最悪、あの機体を使わなくてはならないときがくるかもしれない。
ただ、搬入前に彼らにばれてしまったのは少々厄介だ。とはいえ警察には引き渡されていない。まだ楽に取り返せる。
あの機体は試作機だ。何としても守らなくては……。にしても明日は護衛の方法を変えてもう少し遠くから見るにしよう……。

3話・夕食はみんなで食べるのが一番だと思う。

美香に蹴られてから俺はなんとか自力で立ち上がり飯を食っていた。横っ腹はまだズキズキと痛む。
「美香、頼むから起こす時は手加減してくれよ」
「そんなんじゃ彼女もできるわけないよお兄ちゃん」
「うっ……」
俺の切実な願いにきっぱりと返す美香。全く……最近どんどん態度がでかくなってきてるな。昔はほんと可愛かったのになぁ……。
はっ!いかんいかんこれはロリコンだ。エリートドクオーの秩序を取り戻さなくては……。
「ま、まあ、どうにかなるだろ……。そんなことより美香。学校や部活はどうだ?つーか今年はお前が受験だな」
取り敢えず俺は話題を変える。こんなときは話を変えるのが一番だ。
「ふふーん!お兄ちゃんとは格が違うからね!当然余裕だよ!部活もエースなんだから!」
やれやれなんで兄妹なのにこんな差があるんだか……。受験に必死だった俺の気持ちも考えろよ。
俺は親を嫌うことはほとんど無い。だがこんな風に俺を産んだことだけは俺は親を許せない。
幾ら何でも不公平だろこれは。あれ?話題変えたらさらに苛立ってないか?
というか俺って兄としての威厳皆無じゃね?
「そういや、美香。お前彼氏はできたのか?」
親父が美香に聞く。確かに俺も気になっていた。正直俺の妹は完璧だと思う。
モテる要素は何でもある。亡くなった母さんの代わりに毎日料理を作っているので料理は上手だし、家事全般は何でもできる。勉強、運動とも圧倒的。顔も可愛い。これでもてない筈がない。
「え?いないよ」
いたって普通に答えた。慌てることもなく。
「だってお兄ちゃんのことがまだまだ心配だからスーパーエリートな私が助けてあげないといけないもん!」
美香はスーパーエリートという言葉をよく使う。まあ、厨二病は俺と妹が似ている数少ないところなのだろう。
「ふっ実に世の実力が恐ろしいものよ……」
再び美香の厨二発言。後輩に聞くと美香が厨二病なのは学年で凄い有名らしい。
もちろん本人は否定しているが。まあ、恥ずいよな。わかるぞ妹よ。
そんなこんな話しているうちに食べ終わってしまった。まだ宿題もないのでこのあとすることもない。
そうだ、皿でも洗ってやるか……。
「美香、俺が皿洗ってやるよ」
俺は席を立ちながら言った。
「え?私が別に洗うよ」
少し戸惑ったような美香の声。まあ、確かに手伝いなんてしてなかったしな……。仕方ないか。
俺は身体を手で、もたれかかる。
「いいんだよ。気にすんな。たまにはなんかやらねえとな。ゆっくりしてろよ」
ふっ……きまったな。今のセリフ。
だが、美香を見ると吹きだしていた。
「ぷぷっ、お兄ちゃんそれかっこいいと思ってるの!?笑える」
俺の思惑はだだ漏れだったようだ。考えてみると恥ずかしいな。確かに。
「でもなんかお兄ちゃん変わったよね。前までなーんにも手伝ったりしてくれなかったのに。そんなんじゃお婿にいけないよって」
おや珍しい。美香が正直だ。いつも美香が俺のことを心配してくれているのは知っている。ただそのことを大っぴらに話してはくれないのだ。
「お兄ちゃんってさ、いつも思うけど黙ってれば結構かっこいいよ!だから頑張って!」
美香は笑顔でグッと親指を立てる。……ったく。シスコンなんて言われるかもしれねえが、

くそ可愛いぜ。
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